雄you遊

131号

リレーエッセイ

権兵衛

購買部長 須山 浩巳

2023/06/30

  梅雨明けが近づき、いよいよ暑さが厳しくなる季節になりました。夏といえば、皆さんは避暑地でのバカンス、海水浴、花火大会、アウトドアなど楽しいことを連想される方が多いと思います。私は寝苦しい猛暑がやってくると、高校時代に所属していた剣道部での合宿をよく思い出します。
  高校生の時、夏休みに入り一番暑いお盆の時期になると、私は剣道部の部員として顧問の先生の出身大学で行われる合宿に参加していました。剣道場には、旧日本海軍大将であった山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という有名な格言が、壁に貼ってありました。この頃は、何でも新鮮に思えて見たこと聴いたことが頭に残っています。剣道場の壁一枚隔てた隣が柔道場になっており、そこに布団を敷いて部員たちは寝泊りをしていました。夏真っ盛りで、剣道場に居るだけでも暑い中、剣道着と防具を着けて稽古するのはかなり堪えました。稽古が終わると剣道着は汗でビッショリとなり、絞ると汗が滴り落ちる程です。中には、熱中症で離脱する人もいました。
  ある日、稽古が終わった後、顧問から聴いた講話の中で『権兵衛』という人物の話がありました。その話は、「昔、『権兵衛』という人がいて、若い時、学校の成績は決して良くなかったが、一通りの経験を積んだ後に力をつけて芽が出た。その後力を発揮するようになり大成した。だから、今は結果が直ぐに出ないかもしれないが最後まで頑張りなさい。」というものでした。
  その時、私には『権兵衛』が誰なのか分かりませんでした。それからしばらくして社会人になり、司馬遼太郎の『坂の上の雲』を読んでいた時に『権兵衛』と思われる人物が現れ、『権兵衛』が山本権兵衛であることを知りました。山本権兵衛は明治から大正にかけての政治家で海軍大臣、内閣総理大臣を歴任された人でした。
今でも、正念場を迎えている時には『権兵衛』を思い出し最後まで頑張ろうと思うことがあります。
 

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